kotoko’s blog

映画や本の感想。「内容」にはオチまで書きます。

散歩する侵略者

内容

ある日、道路をフラフラと歩いていたところを保護された加瀬真治。妻の成美は迎えに来たが、二人の関係はとっくに破綻していると告げ、一人では歩くこともままならず、あらゆる認識がおかしな真治にウンザリしてみせる。が、そんな状態の真治を放置しておくわけにもいかず、自宅に連れ帰る。浮気のことなどを責め立てられた真治だったが、特に悪びれることもなく成美に「ガイドになってよ」と頼む。

一方、フリーのジャーナリストの桜井は一家バラバラ事件の唯一の生き残りである立花あきらのことを調べている最中に不思議な少年「天野」に出会う。天野は自分は宇宙人であると名乗り、桜井にガイドになってくれと告げ、立花あきらを一緒に探そうと誘う。

成美の家に家出をしてきた成美の妹が来る。色々な言動がおかしくなっている真治に、妹は自分は義理の妹にあたるということ、ひっくるめて家族であることを説明すると、真治は「それちょうだい」と告げ、成美の額に人差し指で触る。触られた成美は崩れ落ち「家族」という概念を失ってしまう。

成美は自宅でフリーのデザイナーをしているが、打ち合わせのために出かけた際に発注元のデザイン会社の社長からセクハラまがいの誘いを受けるが断る。

留守番をしていた真治は、近所を散歩してある家の前で一人の青年に出会う。そこで真治は「所有する」という概念を青年からもらう。

一方、桜井は天野の宇宙人であるという言葉や概念を奪うという言葉、最終的に侵略するのが目的だという言葉に懐疑的だったが、ある時目の前で概念が奪われる様を目撃し、天野が宇宙人であることを信じ始める。

バラバラ事件の唯一の生き残りである少女立花あきらは、警察の監視の下、病院に軟禁されていた。天野と桜井はそのことを知り、立花あきらを連れ出す。立花は、最初間違えて金魚に入ってしまい、その後入った先のおばさんの内臓を取り出してよく見ていたら動けなくなってしまい、そこにちょうど帰ってきた娘に入ったらうまくいった、と告げる。

ジャーナリストとして自分の体験をルポにして売ろうと、桜井は出版社にかけあうが当然真面目には受け取られない。しかし数日後、桜井の元に厚生労働省からきたと名乗る男が現れ、立花あきらは新種のウイルスに感染している旨を告げ、接触があったら連絡するようにとGPSを渡される。

成美は取引先のデザイン会社で、提出したデザインにいわれのない非難を受ける。そこに真治が現れ、成美を苦しめるのは「仕事」ってやつだろ、と、セクハラ社長から「仕事」の概念を奪ってしまう。そのまま立ち去る2人。街中はなぜかどこか物騒で騒然とした空気に覆われていた。

桜井は道端で演説している青年をみかける。所有の概念を失った青年は、道行く人々に世界平和を訴えていた。そこに通りかかる真治と成美。3人の様子をみた桜井は、天野と立花あきらが探している3人目は真治であると察知し、二人に報告する。

天野と立花あきらは、通信機を作成していた。3人が合流し、「人類」を理解するに値するだけの概念を集め終わったら、その通信機で連絡し、侵略が始まるというのだった。俺も死ぬのか、と聞く桜井に、天野は「サンプルとして数人残すだろうから、桜井さんは残そうか?」と答えるが、桜井はそれを断る。

ある日、立花は職務質問してきた警察官のことを奪った拳銃で射殺してしまう。桜井は焦るが、天野の不思議な魅力に心惹かれていることもあり、どうすることもできず2人に協力して自動車で逃亡しながらの生活が始まる。

真治のみせる素朴で素直な面に、だんだんと冷え切っていた心が変化していく成美。そこに病院から「真治は新種のウイルスにかかっている」と電話がかかってくる。宇宙人じゃなくてウイルスだったのね、と真治を病院に連れていく成美。しかし病院は「何かおかしい」人々で混乱していた。担当医は2人をすぐに別室に案内しようとするが、不穏なものを感じ取った成美は真治の手を引き自宅へと帰る。自宅に到着すると、家の前には不審な男がうろついていた。桜井である。

成美と真治の2人に、自分もガイドであると告げる桜井。そして成美に、真治を決して天野と立花に会わせてはいけないと言う。3人が出会う時が侵略の始まりになる、と。できるだけ遠くに逃げろ、と告げる桜井。最初からそのつもりだった成美は、荷物をまとめて真治と出発する。

桜井、天野、立花の車の周囲に不審な男たちがまた現れる。2人をまたしても殺害する立花。桜井がかつて現れた厚生労働省の男に持たされていたGPSは、オンオフが可能とのことだったが、オフなどできなかったことがわかる。騙されていたことに苛立つ桜井。

ショッピングセンターの駐車場で、逃げる2人と3人は出会ってしまう。車で逃げようとする成美と真治。その前に飛び出す立花あきらを轢いてしまう。「人間じゃないし、いいよ」と真治にいわれ、成美は車を発進させる。立花あきらは他の人間に入ることもできず、そのまま死んでしまう。ついに宇宙人3人が対面してしまったことに焦った桜井はその場にいる人々に今人類が直面している危機を告げ、行動を促すが誰も動かない。そりゃそうだよな、と桜井もそのことを受け入れ「前に言ってたサンプル、あれ、立候補するわ」と、再び天野と共に動き始める。

通信機器を起動して人類侵略の開始をさせようとする天野と桜井は、ついに追い詰められる。天野は全身に銃弾を受け、攻撃してきた人々を返り討ちにするが動けなくなってしまう。自分の体に入れ、と告げる桜井。そしてついに通信機が起動する。

最後の時がきたことを知る成美と真治。成美は、このまま人類が滅亡したら人類の持つ愛を知られないままになってしまう、と、真治に自分の愛の概念を渡す。衝撃を受ける真治。何も変わらない気がする、という成美。2人は浜辺で侵略が始まるのを眺めていた。一方、通信機を起動した桜井は人間の爆撃機によって倒れる。

二か月後。

人類は生き残っており、医療施設でおかしくなった人々を治療していた。そこを手伝っている真治。成美も生きているが、何かを失ってしまっていた。「ずっとそばにいるよ」と真治は成美に告げる。おわり。

感想

うーん、微妙。侵略を目的としている地球外生物が人間の体をのっとって、知識を吸収するところから始める感じ、寄生獣という素晴らしい作品があるから、そこを超える何かがほしいんだけど、さまざまなことで上回らなかったなー。

ただ「それでも真治が愛おしくなってくる成美」と「最終的に天野に手を貸すけど途中人類のために止めようともする、けど、な桜井」がすごく良かった。特に桜井は面白かった。演説を始めちゃうとこも、その途中でお前らは何もしないよな、とあきらめるところも、その後のやっぱサンプルにしてよ、も。寄生獣にも人間のまま協力する市長が出てくるけど、桜井はもう少し人間みがあるというか、揺らぐ感じがすごく良かった。

途中の病院にいっぱいいた感染者みたいな人たちがなんなのかが気になった。最後のほうで「治療方法が見つかったのよ」みたいなことも言っていたし。あれはなんなんだ。概念を奪う以外になにか彼らにできることがあったのか。侵略GOスイッチを押す前だからあれが侵略の方法ってことでもなさそうだし。そこは激しく納得がいっていない。

概念を奪うっていうのは面白い設定だな、と思ったんだけど、なんかこー、真治のあまりに何も知らない感じと、でも前の人間の記憶は持ってるんだ??というのが理屈が欲しかったところかな。

侵略を防げない、というのは好みなので、その後を描くならもうちょっとちゃんと『その後の社会」を描いてほしかったな。なんだかんだで人間はしぶといとか、愛を知った真治は人間側についた、とか、そういうのはいらなかった。

侵略開始シーンの謎の赤い明かりが飛んでくるシーンはチープで笑ってしまいました。

あと、前田敦子のほうが満島真之介より芝居がうまい。