kotoko’s blog

映画や本の感想。「内容」にはオチまで書きます。

 音楽劇ロードエルメロイの事件簿

原作は未読。アニメシリーズは一通り視聴。

Fate作品ミリしらの夫と、Fateシリーズはアニメ、ゲーム一通り履修済みの友人と観に行ってきた。ミリしらだとあまりにも訳の分からない設定だらけになるけれど、と言って全てを説明するにはあまりにも広大なFate世界なので、サーヴァントとマスターという関係と、エルメロイはかつてウェイバーくんで、過去、自分の先生の聖遺物を盗んで聖杯戦争に参加していて、その時に召喚したサーヴァントがイスカンダル王だったということ、今回の話は聖杯戦争には関係ないと思われるということ、そして、このロードエルメロイシリーズは、魔術師がいる(魔術が使われた犯行を魔術で解決する)世界だから通常のミステリ作品的な推理は意味がないと思う旨だけを劇場に向かう道中に簡単に説明をした。

 

とっても面白かった。

 

物語的な話をするならば、やっぱりzero履修者としては、ウェイバーの心に根付いているイスカンダル王のシーンだけで泣けてしまう。全ては“自分をマスターに選んだイスカンダル王は正しかった”ということを証明するために、という時の、実体のないマントだけのイスカンダル王の演出。

あと、上述のミステリ部分の「魔術師が関わっている以上、フーダニットとハウダニットには意味がない、が、ホワイダニットは推理できる」という主旨のことをエルメロイが言った時には、膝を打った。

 

そして肝要なのは、それらが全てミリしらの夫にもちゃんと理解できたということ。

ホワイダニットを理解するにはFate世界の魔術師たちの血縁最強の由縁となっている魔術刻印という概念を理解しないといけないのだけれど、ちゃんとわかるようになっていた。

(ただまぁやっぱりエルメロイが抱くイスカンダル王への思いみたいなものは道中に私たちが説明した言葉以上のことを知らないので思い入れの抱きようもないので、ただそういうものとして受け取ることしかできなかったと言っていたけれど)

エルメロイがケイネス先生に申し訳ないと思っていることも、妹からロードエルメロイ2世を名乗れと言われるシーンが入っていることで表現できていて、それもとても良かった。

このへんに関しては、どこまで原作にあったシーンだかわからないので舞台特有と言えるかどうかはわからないのだけれど、でも「今回の舞台だけを初めてみた人にもわかる」というのは大切なことだと思うので、そのへんが不自然ではない形で理解できるようになっていたのはすごくすごく良かったと思う。

(もしかしたら終演後のご飯の時には大解説祭りを開催しないといけないかもしれないと思っていたからなおさら) 

 

あと、なんと言っても全員お歌がうまい。歌のうまさは説得力。特に主演のロードエルメロイの歌は圧巻。ただ、なぜか歌になると歌詞が聞き取りづらくなるのが不思議だった。後日音域が高すぎるのではないかという感想をツイッターでみてなるほどなと納得した。

 

魔法の表現も面白かった。紗幕に映し出される系の表現は、正面に座っている人以外にはちゃんと見えない(人物と映像の位置がずれる)のであまり好きではないんだけれど、手品的な要素があったり、小道具が光ったり、わ、今の何だわからなかったぞ、というものもあって、すごく楽しめた。

 

衣装と舞台装置も良かった。良かったづくめですね。でも本当に美しくて素敵だった。巨大な舞台装置が半具象で作られていて回転するのをみるとテンションがあがる。(魍魎の筺のような完全抽象も良いけどあれは稀有な成功例だと思う)

 

2019年の年末、そんなに期待していなかった舞台が面白いというのは幸せなことでした。