kotoko’s blog

映画や本の感想。「内容」にはオチまで書きます。

サバイバルファミリー

内容

魚がさばけない母親、尊敬されていない父親、スマホばかりいじっている娘と息子。典型的な家族の物語。

ある日原因不明の何かが起こり、ありとあらゆる電気が使えなくなる。コンセントにつなぐものだけではなく、電池も使えない。大規模な停電だろうとふつうに過ごす1日目。家族はみんなそれぞれ会社や学校に向かう。やがて父親の会社の上司が「電気が復旧するまで出社しなくていい」旨を告げる。それでも決算書のことを気にする父親。しかし上司は目の前で水を確保できるキャンプ場に向かう、と告げて家族とともに去っていく。

一週間がたち、父親と母親は自転車で羽田に向かい飛行機に乗って母親の故郷である宮崎に向かうと言い出す。娘は反抗するが、結局押し切られて出発する。

当然羽田は飛行機が動いていない。諦めて、一家はそのまま自転車で西を目指すことにする。大阪以西では電気がふつうに使えるらしいよ、という風の噂を信じて。

そこらじゅうの人たちが電気を求めて疎開する中、一家が手に入れられた地図は小学生用の地図帳のみ。それを頼りに進むのは無理があり、母親のアイディアで高速道路を進むことにする。そこにもたくさんの人たちの群れ。道中、アウトドアに精通しているっぽい一家に出会う。サイクリングウェアに身を包んだその一家は、食べ物を干物にしたり、山で水を汲んだりと優雅に楽しくエンジョイしている。SAで水を盗まれたりしながらもなんとか大阪にたどり着く一家。しかしそこにも電気はなかった。

このまま宮崎まで行こう、と出発するも、食べ物も飲み物も底をついている。大阪の街では水族館の魚たちを使った炊き出しを見つけるも、目の前で食べ物の配布が尽きる。

精も根も尽き果てて田んぼの真ん中で倒れこむ一家の前に、一頭の豚が現れる。必死で豚を仕留めるお父さん。そこに「何をしてる!」と怒声が響く。それは養豚場から逃げた豚だったことがわかる。怒声の主は、昔ながらのやり方で、井戸水を使って飲み、風呂を焚き、肉を燻製にし、畑をやっている人たちと物々交換で助け合いながら人間らしい暮らしを維持している男性だった。

逃げた豚たちを捕まえることを条件にそこにしばし滞在を許される一家。男性は「ずっとここにいていい」と提案するが、宮崎にいる祖父が気になる、と、一家はそこを出て宮崎目指して出発する。

しかしその行く手をはばむ大きな川が現れる。川を渡るイカダを作り、母親と娘は無事に渡るも、自転車を乗せてわたっている最中に雨で増水した川に父親は流されてしまう。

悲嘆にくれながら線路沿いを歩く母と娘と息子。そこに野犬の群れが現れ、母親は崖下に転落して足を折ってしまう。迫りくる野犬、歩けない母親、絶体絶命のピンチ!というところに、SLが来る。

SLに乗せてもらう母子。一命をとりとめていた父親を車窓から発見し、合流。SLで無事に宮崎へと着くことができる。

そうして2年ちょっとの月日が流れ、ある日突然電気が戻ってくる。そして一家は、ほんの少しの変化と共に元の暮らしへと戻った。

感想

面白かった。SLに助けられて以降がちょっとそこまでのシビアさに反してファンシーで納得いってないけれど、最終的に都心の家に戻るあたり、良い。納得いかないといえば、飛行機が飛んでいると信じ込む父親と母親の愚かさがちょっと信じがたいけど!SLに助けられる直前の、犬に襲われて母親が骨折したあたりの絶望感、面白かったなぁ。SLあんなに急に停まれないよねー。

序盤の正常性バイヤスでなかなか動き出せないところも、娘と息子の反抗的な感じも面白かった。こんな感じに雑に親を扱うよね。わかる。そんでその上で息子が水泥棒を追いかけて乳飲み子連れてるのみてそっと帰ったり、大事にしてた携帯投げ捨ててカバーでパンク修理したりするのがすごく良かった。娘が豚食べて泣くシーンも良かったな。あそこからタイツやめるんだよね。

父親の情けなさ、尊敬されてなさ、でも一家に必要な人なんだよね、というあたりもとても丁寧で良かった。大阪での娘の反抗と、母親の「お父さんがそういう人だってこと!」というひどい一言。それでもお父さんは家族のために頑張るんだよ。

あと、魚はさばけないけど母親がちょいちょい役立つあたりも面白い。高速道路を行こうと思いついたり、水を上手に値切ったり。

家族の関係性や在り方の描写が、とっても丁寧で、言語化するんじゃなくて行動でジワジワと見せてくれて、好みでした。

私ならどうするかなぁ、ということをちょっと考えてしまった。多分ぐずぐずと動き出さずにその場にいようとするし、助けてくれたオジサンのとこでいっかって思うかなー。どうかなー。