kotoko’s blog

映画や本の感想。「内容」にはオチまで書きます。

グリーンブック

内容

黒人のピアニスト、ドン・シャーリーと、運転手兼用心棒トニーの物語。

用心棒の仕事を失ったトニーは、紹介でドンの面接を受ける。3週間の長い長いツアーへの同行。黒人に雇われることに抵抗のあったトニーだが、破格の給金とクリスマスには家族と過ごすことを条件に引き受ける。

偏見の強い南部へとツアーをする2人。ドンのエージェンシーからトニーは「グリーンブック」を受け取っていた。それは、黒人が給油を受けられるGSや、食事をできるレストランや、泊まれるホテルを記しているマップだった。

ツアーの最初のステージ。ドンはとても丁重に扱われ、演者として尊敬を集めている。ドンはトニーに「ここに集まっている客たちは、アメリカでもっとも洗練され教養のあるごく一部の人たちだ」と告げる。

最高の教育を受けてきた階級としての立ち居振る舞いを心得ているドンと、粗暴なトニー。2人は道中何度もぶつかりあう。ケンタッキーを指でつまんで食べるのが最高に上手いんだ、とトニー。品がないと拒否するドン。あまりにトニーがしつこいのでついにチャレンジするドン。美味しい!食べ終わった骨は?「こうするんだよ」と窓から放り投げる。(拾わされる)

離れている家族に訪れた先々で手紙を書くトニー。その「何があったか」しか書いていない抒情の欠片もない手紙に、ドンが今度は助けの手を伸ばす。言うとおりに書いてみろ、と開いた口から出てくる詩情にあふれた美しい言葉の数々。受け取った妻がみんなに自慢するほどに、それは素敵な手紙だった。

だが旅が南に進むにつれ、黒人への差別はひどくなっていく。ドンと組んでいるバンドの2人はトニーに、ドンのこのツアーがいかに過酷なものか、けれども彼はとても大切なチャレンジをしている、ということを告げる。

旅の終盤、演奏する予定のレストランで、ドンは演奏前にレストランで食事をすることを拒否され、控室の物置部屋に同じメニューを運ぶ、と提案される。「ここで食事をできないならば、演奏もしない」と拒否するドン。トニーはドンを連れてレストランを後にする。

近くにあった黒人用のレストランに行くトニーとドン。そこでドンはピアノの演奏を披露する。

2人は帰路につく。もうクリスマスの当日となっていた。疲れ果てたトニーのかわりに運転をするドン。家に寄らないか、という誘いを断り、ドンは帰宅し、秘書も帰らせる。家族たちに迎え入れられるトニー。あたたかな家庭。1人のドン。トニーがツアーの思い出を家族に話して聞かせているとドアをノックする音がきこえる。ドンだった。突然の黒人の来訪にトニーの家族は一瞬かたまるが、トニーの妻はドンをハグして耳元で「手紙を手伝ってくれてありがとう」と告げる。

メリークリスマス。

感想

最近はめっきり「いい話」に疲れてしまってみないでいたのだけれど、やっぱりこれくらいはみておかなくては、と観た作品。とってもとってもとっても良かった。

いまこうして内容をまとめて書いていても、レストランでの演奏を拒否した後の部分は胸が熱くなってくるし、妻の抱擁と感謝の言葉では目頭が熱くなってくる。

教養があり、もっとも先進的な思想を持っている白人たちであっても、ドンの扱いは黒人としての扱いであることの残酷さ。その中で戦うドンの気高さ。その気高さを密かに称えているバンドの2人。色々なことが、なんというかとても崇高だった。

それでもドンが持ち続けた矜持とか、そのために彼が失った家族とか、強く、洗練された「選ばれた側」として生きることのしんどさ、選ばれるという差別、色々なことが、トニーとドンの友情というオブラートに包まれていて、優しくて良い物語で、ほんと、良い映画、という言葉に尽きる。

なんの感想もいらなくなっちゃうんだよな、良い映画。作品をみろよ、だけ。みれば全部わかるからさ。